透明な愛の正体

微妙に2話目。以前UPした「透明な愛の正体」から読むと、ちょっとわかりやすいかもしれません。
http://www5.pf-x.net/nicolle/



熱を孕んだ指先で、適度に長くうねった髪の横のそれを耳介に掛けられる。しかしそれも、重力に遵って、机案へと垂れ下ってしまう。
玉は、先程から似合わないくらいに真っ直ぐと注がれる飛翔の視線から逃れていた。時折、無性にこの目から逃れなくてはいけないという、根拠のない思いに駆られる。今がそのときだ。その癖、この視線から逃れたら負けだと感じるときもある。矛盾していると思いながら、玉は、視線を近くの飛翔にではなく、遠くの壁へと向ける。
身体の至るところを弄られているのは最早どうでもいいが、視線を交えてしまえば、どうしたって羞恥心が器から零れそうなほど襲ってくる、だが、このまま平行線のような状態でじりじりと襲ってくる何かを堪えていることもままならない。
不意に、自分の内を侵す刺激が増して、漏れそうになる嬌声を、唇に手背を当てることで抑える。
「(・・・そもそも、何故こんなことに・・・・・・、)」
思い出してみれば、それは、単純なものだが理解し難い。
例によって例の如く、この上司は酒を飲んでいたのだ、それも左右羽林軍の両大将軍と共に。それを、仕方無く回収しに行ったはいいものの、何故か逆に引き摺られるようにして工部へと戻ってきた。
それから目の前の男は一言も言葉を発しない。
「(いや、一言、黙れと云いましたね、)」
何故、自分がそのような言葉を向けられなければならないのか(今に始まったことではないが)と、そのときは憤慨して、云い返したものの、やはり返事は返ってこないまま、執務室に辿り着き、酒臭い口で口付けられた。文句を放っても、手応えのない飛翔に、玉は諦観を感じ、一切の抵抗を已めた。
「・・・・・・っう」
玉は、再び落ちてくる口付けに、視線を合わせまいと瞼を下ろした。接吻が深いものになるにつれて、次第に飛翔の体重が組み敷かれる玉の身体へと掛ってくる。
「ちょ・・・背中、痛いんです、が・・・・・・ぁ、」
背中の下は、柔らかな布でも臥牀でもなく、無機質な机案だ。玉は、一度は抗議した言葉を、もう一度繰り返す。しかし、先刻は無視されたそれも、今度は反応が返ってくる。
「お前が―――――、」
「・・・っ・・・・・・・・・何です、」
急に言葉を発したかと思えば、すぐに語尾を切って黙ってしまった飛翔を、玉は見上げて聞き返す。だが、何でもねぇと、飛翔は曖昧な言葉しか返さない。
「・・・っ、痛ぇな、締めるな」
仕返しだと云わんばかりに、後孔を意識的に収縮させると、飛翔が薄らと苦しげな表情を見せたので、ざまあみろと視線を向けた。
「―――っ!」
どん、という、机案を拳で叩く音が、真横から聞こえて息を呑む。それが、飛翔の憤怒の感情を示しているようだ。そのまま、飛翔が身体を下ろして、玉の顏の横へと頭を埋める。露わになっている耳へと、生温く柔らかな感触がして擽ったさを覚えて、玉は身を捩った。しかし、それすらも容易に拒まれて、首筋に歯を立てられ、甘噛みされる。その行為に先程からの無言が相俟って、玉は拒むように飛翔の両肩に手掌を押し当てて、その顏を窺うために挙上させた。
「・・・ぃぁ・・・っ、」
「・・・・・・てめぇ、俺以外に陽玉なんて呼ばれてんじゃねぇよ、」
玉が見上げた、飛翔の表情に浮かんでいたのは、怒りと云うよりは苛立ちであった。だが、結局のところ、飛翔の意思がはっきりとしてしまった今は瑣末なものでしかない。
「・・・なんですか、ここまでしたのは、結局のところ悋気が原因ですか、」
「あれは俺が考えたんだ、口にしていいのは俺だけだ」
拙い独占欲だと思った。玉は、嘆息する。
「子供ですか、貴方は・・・・・・はっ、ぁ!」
今まで中断していた動きが再開され、引き抜かれたのと同時に襲ってきた快感が、今度は強く挿入される刺激に塗り替えられて、玉を襲う。それが幾度も繰り返されている内に、一体、自分の身体のどの部分で快楽を感じているのかわからなくなった。それなのに、背中に付随する痛みや、摩擦によって生じる直腸への熱ははっきりと意識できる。
「あぁっ、ぁ、・・・っぅつ!」
容赦なく体内に迸るものの不快感を覚えながら、自分の上に覆い被さってくる飛翔を、玉は横目で見遣る。
呼吸が荒いせいで頻繁に胸郭が上下していると云うのに、その上に圧し掛かるのは已めて欲しいものだと思い、自分に負けない程度に呼吸を繰り返す飛翔を見て、歳なのだから無理しなければいいのにと、内心罵った。しかし、歳の割には引き締まったその背中の、肩甲骨部分の起伏を、玉は、呼吸を整えつつも幾度か撫で遣る。
「・・・・・・・・・陽玉、」
「玉、です」
窘める玉の言葉は常と変わらないが、そこには殆ど怒りも拘りも含まれていない。先日、雷炎が云ったように、これがこの男の不器用な愛情表現だと云うのならば、一時的に許すことはできないこともないという思いが、玉の頭を僅かに過ぎった。勿論、それを許し続けることはできるはずもないが。
「(親愛を示してくれるのならば、玉、と呼んで下さればよいのに・・・)」
そう思うが、その実、同様にして愛情表現が疎かな自分も、滅多に上司の名を呼ぶことがないということも自覚しているので、そんな言葉を吐くことなんてないと、玉は嘲笑する。
なんとも、わかりにくく見えにくい感情だろう。







前回の「透明な愛の正体」と微妙に繋がっております。要は、管飛翔の嫉妬話です。白黒大将軍と酒宴していた飛翔を迎えにきた玉を、雷炎辺りが「陽玉」とか呼んじゃって、そのまま〜的な。
っていうか、首筋ちゅーがリクだったはずだが、これはキスしてるのか?噛みついているだけ?あーわからない、私にはわからない、今の〜僕〜には理解できな〜い♪(爆)
そして、ぐだぐだなR18でごめんなさい・・・・・・なんか、もう、書いていて駄目でした↓↓↓
というか、私の書く工部話は、お互い名前を呼ぶ率がかなり低すぎて困っている件。どうでもいい。