懼れる人 |
「――手に入れたつもりか。」 言葉は唐突だった。背筋が粟立つような冷たさ、情事の最中とは思えぬ熱の無さ。 暝祥は其の声に、動きを止めた。見下ろした白い小旋風の体は、適量の数倍の媚薬を投入した挙句、嬲り続けられ、血と汗と互いが放ったもので汚されている。痛々しい縄の痕も、青くさえなった打撲の痕も、噛み跡も、爪の軌跡も全て暝祥が穿ったものだ。決して消えないようにと刻み続ける其れは、小旋風が暝祥のものである証だ。其れが有る限り、他の誰も小旋風に手は出せない。出させない。 「・・・お前は、私のものだ。」 暝祥は繋がったまま、小旋風の首筋に指を這わせた。愛撫では無い。気道を辿って、痕が残るほどの力で触れる。容赦は無い。小旋風の顔が苦痛で歪む。 「そうだろう。其の目線で私を誘うのはお前だ。淫乱な体で、私に縋るのはお前だ。否定できると云うならしてみるが良い。」 小旋風の矜持をなるべく傷つけようと暝祥は言葉を選ぶ。拒絶の言葉は、首を締めた手でせき止めた。逃げを打つ体を、暝祥はねじ伏せる。そのまま結合を深くすれば、小旋風の首が仰け反った。食いしばった歯が、ギシリとなって、今切れたのか其れとももっと前に切れたのか分からない血が小旋風の唇の端を汚す。暝祥は其れを舐め取った。背けようとする顔を、髪を掴んで固定する。首を絞めていた指を失って小旋風は咽た。唇の端を舐めただけで、口付けは落とさずに、暝祥はそのまま顔を下へとずらし、小旋風の白い白い首筋に歯を立てた。咽る喉は不規則に動いて、欲望のままに動く歯は、白い首に容赦なく痕を残してゆく。腰が、本能的な危機に震えるのを、暝祥は笑い飛ばした。 「――そんなに、物欲しそうな動きをするな。小旋風。」 「そんなものは、錯覚に、過ぎな」 「言葉を話すな・・・!」 そんなもの、が何を指すかを理解できないまま、手加減無しで暝祥は掌を振り上げ、そして振り落とした。パン、と耳障りな音とともに右手が痺れる。痛みに、暝祥は小旋風を叩いたことを知った。理性より先に動いた右手は、間違いなく小旋風の言葉を、懼れている。けれど、暝祥は其れを認めるわけにはいけなかった。 懼れているのは小旋風だ。組み伏せ、殴り、犯す暝祥を、小旋風が懼れているはずだった。その逆などあってはならない。 「小旋風、良いものをやろう。」 暝祥は優しく微笑んだ。そして、寝台の隣にある机の上から、細長い針を一本手に取る。見せ付けるように其れを小旋風の前で指で弄ぶと、幼い体が恐怖で強張る。締め付けを強めた其れに、暝祥は満たされるよう微笑んだ。 「もっと快くなる。」 耳元で囁くと、小旋風が狂ったように暴れる。其れでも、縄で両腕を寝台の上に戒められている体だ。抵抗など、物の数に入らない。 「ア、ぁぁ、いや、だ・・・・ッ」 ぷつ、と針を腕に刺すと、小旋風は脅えた悲鳴を上げた。針の先に塗った媚薬は即効性が高く、効果も高い。通常は一回で一本が原則だが、今日小旋風に刺すのは其れで4本目だった。精神も身体も限界まで追い詰められた小旋風の悲鳴は、当然のもので、其れに漸く暝祥は安堵して目を細めた。 「ぅ、ぁああッ、・・・ァ、い・・・ッ」 意味の無い音が、悲鳴のような響きで唇から零れる。即効性の媚薬を追加されて、小旋風の瞳はあっというまに欲情に溶けた。暝祥は、細い体をかき抱く。拒絶は無い。下手をすれば命に危険が出かねない量の薬を投下されて、小旋風にもはや暴れる余力など無い。 「小旋風、お前はただ、熱に浮かされて浅ましく強請れば良い。」 暝祥は呪詛のように、耳朶に囁いた。体を揺さぶれば、嬌声が闇に溶ける。 「――私の、ものだろう?」 理性を強制的に瓦解させられた小旋風は喘ぎ声以外を返すことは無い。暝祥は満足して、最奥を穿った。悲鳴を上げて達する体を、暝祥は離さない。 そして、小旋風の瞳を見ることは決して無かった。 またしても世羅さまから戴いてしまった、なんと瞑祥×小旋風(媚薬ネタ R18)! 戴いてきたなんて名ばかりで、奪取ですよ、奪取。ありがとうございます! わぁ・・・・・・なんて殺伐としたエロネタ、というのが第一印象だったりしなくもありません(ぉぃ)そして、この頃の燕青との関係も気になります。そして、小旋風が怯えるシーンがいい・・・・・・ついつい想像してしまいますvvv眼福でした。瞑祥が怯えるシーンは・・・・・・なんだか、新鮮で感心してしまいました。 |