腕と首は欲望
Arm und Nacken die Begierde,



「・・・っぁ!」
背後から覆い被さるように乗ってくる龍蓮の重みを不承不承受け止めて、露わになっている上半身を蠢く手の動きさえも甘受していたら、不意にその手が珀明の胸の飾りへと触れてくる。そのせいで、珀明は小さく声を上げて、龍蓮の手から逃れるようにして身体を捩ってみせた。だが、龍蓮は珀明の動きを上手く往なし、密着をより深いものにする。
「・・・・・・・・・っ」
だが、力の入らなくなった身体を持て余した珀明は、龍蓮の手を振り払う力を最後に振り絞るようにして出し切り、そのまま臥牀に腹臥位のまま沈んだ。そして、最早龍蓮に背中をとられるのは懲り懲りだと云うようにして、すぐさま身体を反転させる。しかし、そのせいで龍蓮と向き合う体勢になり、一糸纏わぬ姿の珀明は、居心地の悪そうな視線を龍蓮に向けた。
龍蓮が自らの左腕を珀明の背中へと廻し、掬うようにしてその身体を僅かに浮かせる。手掌と前膊は後頭部から頸部にかけて支えた。
一方の珀明は、龍蓮が触れてくると同時に過敏に身体を震えさせた。それが恐怖からではないことを知っている龍蓮は、行為自体は止めず、ただ珀明ができる限り落ち着くように眦に口付けを落とした。軽く音を立てるようにして吸うと、珀明の頬にさっと赤みが差すのがわかった。かわいいと思った。
「・・・・・・龍蓮、っ―――――ゃああっ!」
脚の間に入り込んだ龍蓮の膝が、珀明の股間を押すようにして刺激する。素肌へと直接触れる布地が、擽ったいのと、急所を責める快楽の両方が珀明を追い遣る。そして、仰け反るようにして震える珀明の上体を支えながら、途切れることのない柔い刺激を与えてゆく。
「ゃっ、あ・・・・・・やめっ、ろっ」
「断る」
先程唇で触れた珀明の眦に、涙が溜まる、龍蓮は再び掬うようにしてそこに口付けた。僅かに塩辛い味がした。その行為に、反射的に顏を反らそうとした珀明の頤を、龍蓮は指で捉えて接吻する。その間にも下半身への直接的な刺激は途切れることはなく、珀明はその苦痛と快楽を持て余しながら、何度も首を横に振る。上膊を、爪を立てるようにして掴む些細な抵抗を、龍蓮は止めることはしない。
「ん・・・・・・っ、」
「好きだ、」
口付けの合間に、時折零れる生温かい吐息が、至近距離にある龍蓮の顏にかかる。
暫くして、珀明からの抵抗が消えると、龍蓮は満足したかのように珀明の唇を解放して、そのまま首へと舌を這わす。それと同時に珀明が小さく息を呑み、首を竦めたせいで、龍蓮は渋々と狭められた空間から退く。そして同時に、態と強めに珀明の急所をせめてみせた。
「―――ひぁっ、やっ、・・・龍れっ、」
上半身を震わせながら快楽に悶える珀明を見て、龍蓮は満足げに笑む。そして、衣服を掴んできた腕の手首を捉えて自分の方へと引き寄せると、龍蓮は珀明の背中を手掌で触れた。汗の滲む皮膚が、しっとりと手掌に馴染む。肩甲骨の下部の辺りを何度か上下に撫でると、それに釣られるようにして、珀明の腕が伸ばされ、龍蓮の腕を掴んでくる。龍蓮が、その腕の肘関節に唇で軽く触れると、下がった頭をより近付けるように、珀明の腕が龍蓮の首へと廻されて、頭部を丸ごと抱き締められた。ちょうど、珀明の胸部の位置に龍蓮の顏がある。龍蓮はほんの悪戯心で、胸の飾りを軽く嘗める。すると、珀明は過剰とも云えるほどの反応を見せて、龍蓮の頭を放す。
「・・・ばっ―――――っ!」
恐らく莫迦と云いたかったのだろうな、と思いつつも、珀明に最後まで言葉を紡がせることをせずに、龍蓮は自らの手で珀明自身を捉えてしまうことで、言葉を奪った。いきなり急所に刺激を与えられて、珀明の大きな眼が余計に大きくなる。奇麗な碧に吸い寄せられるように、龍蓮はその眼瞼に口付ける。
「・・・っ、いぁ・・・動かすなぁっ」
「無理な注文はしないでくれ、珀明」
「うるさっ・・・んぁ、っぅ・・・や、もうっ」
龍蓮の肩口に顏を埋めながら、珀明は余裕のない声で訴える。その必死の嬌声が、龍蓮を嬉しいような愉快なような悩ましいような気持ちにさせるので、龍蓮が小さく笑う。それが甚く気に召さなかったようで、珀明は、軽く怒気を発しながら龍蓮の首筋に歯をたてた。時折首筋に触れてくる、生温かな舌の感触が、擽ったい。
そんな些細な反撃に、龍蓮は身体が疼くような感覚を覚え、珀明の下肢に与える刺激を強めて、更に追い遣る。半ば急性に珀明を臥牀に押し倒して戻すと、繰り返し擦り上げる動きで、珀明を限界へと導いた。
「・・・うぁっ、あぁ―――っ!」
珀明が吐精すると、龍蓮の首に廻されていたその腕が力をなくして臥牀にぱたと零れ落ちていった。珀明の顏に目を遣れば、幾分乱れた呼吸を、浅く繰り返している。左の眦に溜まった液体が一筋、耳の方へと零れてゆくのがわかって、龍蓮はそれを舌で掬う。
「痛い、」
だが、珀明の手で長い髪を引っ張られて、龍蓮は仕方なく頭を起こす。すると、龍蓮の予想通り、照れながら睨み上げる珀明がいて、笑い掛ければ、また髪を引かれる。龍蓮が、少し大袈裟に痛がって見せると、珀明が淡く笑うのがわかった。
「珀、」なんていとしい生き物だろうか。
それだけで、全てが許されているように思えた(そんなはずなどないのに)。





いろいろなところにキスしまくっているせいで、御題を忘れてしまいそうですが(汗)一応、珀明が龍蓮の首にキスしているシーンがメインとなっております(誰もわからないよ)。エロとか言っていたくせに、本番なくてすみません・・・全部書くと無闇に長くしてしまうので、こんなふうに尻切れ蜻蛉になってしまったとさ(謎)