に溺れる愚者



腰を後ろに突き出した体勢で、珀明は2度目の絶頂を向かえた。突っ伏して荒い呼吸を繰り返す。敷布を湿らせているのは、涙なのか唾液なのかわからない。意識が朦朧とする中で、中に迸った龍蓮の白濁が後孔から零れ大腿を伝うのがわかった。

「珀、こちらを向け。」

龍蓮の軽い命令に珀明は僅かに顔を上げるが、だるい身体は思うように動かなかった。それを察した龍蓮は、珀明の身体を反転させ今度は仰臥させる。そして、珀明の右腕と腰を掴み、持ち上げて自分の膝の上へと乗せる。

「っ・・・なんだ・・・龍、蓮・・・。」

赤子のように上手く首が据わらないのを龍蓮の手に支えられる。最早、全裸のまま持ち上げられていても、羞恥心は湧き上がってこない、それ以上の行為を嫌でも味わったからだ。

潤んだ瞳に見下ろされ、龍蓮は冷めかけていた熱が再び蘇るのを感じた。舌から啄ばむように唇を奪うと、珀明はあっさりと陥落する。

「んぅ・・・ぁ・・・」

腰に手を回し、熱を取り戻して勃ち上がっている自身を、重力に任せながら珀明の中に埋めていく。柔らかく解れていたため、抵抗は殆どない。与えられる快楽で、珀明は高い嬌声を上げる。

「やはり、顔が見える方がいい。」

微笑んでそう告げた男を見て、珀明は無意識に顔を打ち顰めた。何故かわからないが、泣き出したくなった。それを堪えるために、身体を支えるために龍蓮の肩へと置いていた手を外し、そのまま首へと回し抱きついた。

「ぁあっ、あ、っ・・・・・・ぃやっ」

1度の繋がりでより過敏になった身体は、易々と快楽に溺れていく。緩急を使い分けながら律動を繰り返し、龍蓮は少しの余裕も残らないように珀明を追い詰める。

「・・・りゅ、れ・・・っぁ、ひぁ」

小気味良いほど反応を露わにする珀明自身が、向かい合って座る龍蓮の腹に触れて、それすらも刺激となり珀明を責める。いつになく執拗な行為に、珀明は酒に酔ったような感覚を覚える。
珀明は龍蓮の肩口に唇を当て、時に歯を立てて快楽をやり過ごした。すると、龍蓮の舌が珀明の耳孔を侵す。頭芯が痺れた。睦言を囁かれ、それに答える言葉を持たない自分がもどかしかった。

「んぁ・・・ぁ・・・ぁあっ、っっつ!!」

珀明が先に3度目の絶頂へと達し、暫くして追うように龍蓮も、珀明の中へと欲望を注ぐ。その余韻を感じながらも龍蓮は自身を抜き出し、同時に吐き出したものも零れ落ちる。嫌な感覚だと、珀明は顔を歪めた。

自分が眼を覚ましたとき、この男は傍にいてくれるのだろうか。悃願にも似た思いを、抱かれた後はいつも抱く。

龍蓮は、なるべく身体に負担をかけないように珀明を臥牀へと横たわらせ、身体を拭くために大きめの白布を掛ける。右腕で視界を塞ぎ、珀明は荒い呼吸を繰り返している。金色の糸が乱れる様子に龍蓮は愛しさを覚え、誘われるようにその髪に触れる。そして、汗で滲む衣服と心地よい倦怠感とを共に感じながら、自らも臥牀に沈んだ。







ただヤっているだけの話。『愚者の口付け』の続篇みたいな話でもある。無駄に分けて4話にしてみましたが、意味はありません。ちょっとやってみたかっただけです。
見ての通り龍珀。いや、もうこれ以上龍珀の裏話は湧いてきません、いや、私の頭が沸いてます(ぉぃ)あと1話くらい書ければいいなぁ・・・とか思っているんですが。
とりあえず、初めての情事は『可惜夜』の通りですが、この話はおそらく3回目くらいかな、設定としては。幾分か慣れたというよりも、深みに嵌る度合いが増した珀明。絆されてる絆されてる。
珀明は、まずこの行為に陥ることが一番嫌なのだけれど、懇願されてしまえば受け入れてしまう。だから、次に嫌なのは(恥ずかしいのは勿論嫌だが)、文中にもあるように、目覚めたときに龍蓮がいなくなっているということ。どうせいなくなるんだったら、自分が見ているところでいなくなって欲しいと思っている(はず)。