明けてもあなたがいる


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昨夜同衾したはずの相手が、朝目覚めたら隣にいなかった。
その紛れもない事実は、聊か珀明を憂鬱な気分に陥らせた。眉間に皺が寄る。
誰かが傍にいられないと眠ることができないわけではない、そんな子供ではない。はずだ。
けれども、同衾した翌朝、傍らに龍蓮がいなかったことは、少なくとも、覚えている範囲ではなかった、それが余計に珀明の動揺を誘う。だからと云って、臥牀のすぐ隣にいてくれなくてもよかった(それは、ある意味とても心臓に悪い)、ただ、眼の届く範囲に居てくれれば、それだけで安堵を感じることができるというのに。
曇る心を振り払うように頭(かぶり)を振ると、漸く、視界の端、卓子の上に見慣れた横笛が入る。
(……なんだ、いるのか、)
けれども、少なくともこの室(へや)の中にいないことは確かで、少なからず安堵を覚えるも、なんとなく胸の内に消化しきれないものが殘る。
(龍蓮の、莫迦、野郎)
そう思って、瞬間、珀明は自分が大層子供であることを自覚した。自分の思考に羞恥心を覚えて、どうにかして前思考撤回したかった。淋しいわけではない、ただ、どうしてなのか不安が過ぎる。
(でも……笛があるから、戻ってくるはずだ)
文句はそのときにと、珀明は臥牀から降りる。冷やりと、片足に石造りの床の感触を覚え、珀明は沓へと足を伸ばす。
待っていると云う、受動的な行為が、堪らなく厭だと、珀明は自ら動くことを決めた。待っていても解決しない胸に燻る何かを、さっさと解消してしまいたい。再び眠ることもできそうもなかった。
足の拇指で、沓を引っ掛け、手前へと寄せる。
履き終えると、珀明は、そのまま立ち上がり、闔へと目指した。







新刊(琥珀)での、珀明くんの行く先(?)がこの上なく不安なため、書いてみた。ちなみに、新刊とは全く関係ありません。龍蓮は、どこに行っちゃったんでしょうね・・・・・・気になります。
なんか、龍←珀って感じなんですが・・・たまには、こういう珀明も好きです、はい。